今さら過ぎて質問しながらちょっと赤面するが、消せるボールペンというのをご存じだろうか。
いや、大丈夫。答えなくていい。もう全然いいから。こちらもあまりに恥ずかしすぎて「だろうか」の語尾に?マークが付けられなかったぐらいだ。
そこまで恥ずかしがっておいて何だが、そう、アレだ。パイロットの『フリクションボール』に代表される、摩擦の熱でインクが透明になる(=消える)ペンである。

消せるボールペン2種。三菱鉛筆「ユニボールR:E」とパイロット「フリクションボールノック」。

僕などは40代半ばにして、たまに「休」と「体」どっちが「やすむ」だったか分からなくなって、「明日はお体みをいただきます」って書いてから、あっ違う違うと書き直すことがある。
つまりは、これが無いと大人としての体面とか一切保てなくなるわけで、今や消せるボールペンは恥をかかずに生きていくための必須サバイバルツールと言っても過言ではない。

ただ、この大人に優しいボールペンにも、ひとつ重要な欠点がある。
そもそも「消せるインク」じゃないと消えない、ということだ。
低粘度の油性がいいだの濃い色がいいだの、人にはそれぞれインクの好みというものがある。消せるインクにこだわらず、そこは好きなインクで自由に消させろよ、と思う事もあるのだ。

じゃあもう、好きなインクで消せるボールペン、無いなら作ろう。

実はこすっちゃえばなんでも消せるんじゃないか

先にも述べたが、消せるボールペンというのは摩擦の熱によって透明化する化学的に特殊なインクを使っている。
これはかなり特殊なもので、素人がゼロからそんなものを作るのは難しい。
だが待って欲しい。摩擦というのは、ようするに「こする」ということだ。

いきなり不穏な空気が流れ始める。でも電動ルーターならいけるはず。

小学生の頃、消しゴムを忘れた時に鉛筆の誤字を指でこすって消そうとした経験はないだろうか。
あれを強烈にしたら、どんなインクだって消せるんじゃないか。
化学がダメなら、物理でやってしまおうという試みである。

文房具工作はだいたい、破壊から始まる。

作り方は簡単。
まずお好みのボールペンを真っ二つにするところから始めよう。
金属軸は大変だが、プラ軸ならノコギリで数分もあれば簡単に両断できる。小さい目のホビー鋸は文房具の改造に必ず備えておきたいアイテムだ。

くっつけただけで、もう見た目がおもしろい。

ペンがほどよい長さに切れたら、電動ルーターのおしりに瞬間接着剤とホットボンドで結合する。
で、今回の工作はこの辺りにちょっとだけ工夫がある。ペン軸の断面がちょっと斜めになるように切ってから、接着したのだ。

わざと斜めに切ってくっつけたのは、こういうこと。

このルーターは充電タイプであり、ペンをくっつけたすぐ近くにコネクタがくる。
そこでコネクタを抜き差ししやすいように、干渉を避けてペンを斜めにしたのだ。
工作をやっていて一番楽しいのは、完成した時じゃない。この手の思惑がバチッと予想通りハマった時だと思う。

できました!

ということで摩擦で消せるボールペンが完成。
工作時間わずか30分というお手軽さだ。ちなみにフリクションボールはインクの開発に30年以上かかっているそうだ。分と年では単位が違う。開発者の方に申し分けなさすぎて、つらい。

摩擦で消えるペン、使ってみた

さて、ではこの「摩擦で消せるペン」、実際に使ってみよう。

手に持ったときの率直な感想は「重い」だ。

ペンが短すぎて握れないかもと心配していたが、意外となんとかなっている。
あと、こちらは予想通りだが、重い。

わざとらしすぎる顔芸。ペンの重さに関係なく誤字はするので、不要な小芝居である。

「あっ、ペンの重さに気を取られて字を間違えちゃったよ!」

「害」じゃなくて「概」ですよ。早く消してください。

ということで、逆さに持ち替えて誤字をこするぞ。
あっという間に誤字が消えていく様をご覧いただきたい。

 

これを成功と見るか失敗と見るかは個人の自由である。
「削れてるじゃねぇか」「穴あいてんぞ」と言われても、こちらとしては「でも、消えてるじゃないですか」以外に答えるつもりは無い。だって“摩擦で消える”とは言ったけど、“摩擦で穴が空かずに消せる”とは言ってないから。
あくまでも“摩擦”と言い張ったのは申し訳ない。言葉として正確に“研磨”と伝えていなかったのはこちらのミスかもしれないが、でも、消えてるからいいじゃないですか。

場合によっては机の天板まで削ってしまう可能性があるので、木板などを下敷きにしておくのがオススメ。

この「摩擦で消せるペン」のすごいところは、先端のビットを交換すれば、紙でも木材でも金属でも、何に書いてあろうが跡形無く消去できるということ。
もちろんペンのインク(油性・水性・ゲル)を問わず、さらには鉛筆や油性マーカーで書いたものまでなんでも来い、だ。

ただ、ノートの誤字を直そうとボーッとこすっていて、気づくとこういうことになっている場合もある。
消えすぎるのも難点ということだろうか。

電動文具を使うときに油断していては危険です。(本当にボーッとしてた)