きだて
前回からの流れなんですが、セメダインのツイッターアカウントで、エイプリルフールに「結婚お祝い用接着剤『メデタイン』を作りました」というネタツイートをしたんですよね。それもガッツリ作り込んだ画像付きで。

で、それがあまりにウケたので「本当に製品化しましょう」ということになったんだけど、これがまたさらにウケすぎて、クラウドファンディングで発売してなんと数時間で売り切れてしまってさあ大変。がんばって手作りして皆様にお届けします、と。←今ここですね

話題となった『結婚お祝い用接着剤 メデタイン』和装Ver.パッケージ。

篠原
はい。

きだて
ざっくりあらすじをお伝えしたところで、引き続きセメダイン株式会社広報室の篠原泉さん、そしてメデタインの企画を担当された面白法人カヤック企画部の八木原泰斗さんにお話を伺います。

今回もセメダイン篠原さん(左)とカヤック八木原さん(右)に語っていただきました。

 

●メデタインのデザインについて

きだて
前回は「再販決定しました」というところまでだったんですが、ちょっと話を戻しまして、またエイプリルフールの辺りの話なんですが。
企画を立ててあれこれやっているうちに、カヤックさんから「こういうの作りました」って画像が来たわけですよね。あのやたらインパクトのあるやつが。見ただけで「うわっ、めでたい!」という絵力を感じるアレが。

篠原
「うちのスーパーXがこんなステキなことになるなんて!」って思いしまたよ!
最初にメデタイン案を聞いたときはまだ「チューブもそれっぽくします」という話だけだったんですが、「できました」っていきなりあの画像が届いた時は本当にビックリしましたね。

「それっぽく」というレベルではないチューブの画像。
八木原
結婚写真はいわゆるフリー素材的なものなんですけど、商品は実際につくり込んで、カヤック社内で撮影しました。
「強力型」が「協力型」になってたり、熨斗がセメダインCになってるところとか、うちのデザイナーが超気合い入れて、色々盛り込んでくれました!
めでたい感満載の結婚写真。
よく見ると熨斗の中にセメダインCが。

きだて
情報量が多い!

八木原
洋装バージョンも、ラベルのバラの葉の中に隠し文字で「メデタイン」って入ってたりとか、チューブの円形レース模様は筆記体の「Cemedine(セメダイン)」を回転させて作ってるんですよ。

こちらがクラウドファンディング時に新たに作られた洋装Ver.
おわかりいただけるだろうか。
きだて
そこまでいくとほぼ誰からも気づかれないですよね。教えられて初めて「マジかー…」って言うレベル。俺、いま「マジかー…」って思いました。
チューブのレース模様の地紋にも注目してほしい。
商品名を少しずつ回転コピーして作ったレース柄のサンプル

八木原
箱の中の製品配置にもこだわってまして、まずメデタイン同士の距離は29㎜。これは「つく」にかけてあります。さらにヘラとメデタインの下端との距離が27.9㎜で「つなぐ」ですね。もちろん、全ての数値は割り切れないように奇数にしました。

きだて
…こだわりが細かすぎて、何を目指してるのかもうわかんない。

パッケージ内の製品配置指示。こだわりすぎとしか言い様がない。
篠原
私たちはカヤックさんからデザインが送られてくるのを待つだけだったんですが、毎回すごいこだわりの提案が届くので「わー、メデタインがどんどんめでたくなっていく!」って社内で感動していましたね。「すごいねー、これ、もらった人はうれしいねー」って。
この写真の撮影時は、もう「マジかー…」しか言ってない。

 

●メデタインの中身の話

きだて
ところで、メデタインの中身は『スーパーXゴールド』ですよね?

篠原
スーパーXはこれ一本で最も多用途に使えるんです。なので、ギフトとしてお渡ししたときに、新婚のご家庭で一番使いやすくてお役に立てるんじゃないかな、と思いまして。
ゴールドなのは、普通のスーパーXより接着速度が速いので使いやすいかな、と。

きだて
新居での初めての共同接着作業に。

篠原
あんまり接着剤使う経験の無い人って、売り場に行っても何を買えばいいのかわからないんですよね。どれを使えば接着できるのか分からないから。そういう困っている方のためにオールインワンにしたのがスーパーX。

なので、新婚のご夫婦が困ったときに「そういえばお祝いにもらったメデタインがあるじゃないか!」と思ってもらえたら嬉しいです。


きだて
いや、使いやすいのは分かるけど、もったいなくて使えないですよ。

篠原
そういうコメントもたくさんいただいているんですが、できれば実際にお役に立てていただきたいんです。
ちなみに、セメダインアカウント宛てに「スーパーX よりエポキシ系接着剤の方が良くない?」っていうリプライがめっちゃ届いたそうです。先ほど述べた理由で「いや、そこはスーパーXです」という返答にはなるんですが。

「そこはスーパーXです!」と断言する篠原さん。

きだて
あっ!二液混合タイプ(A液・B液を混ぜることで硬化する接着剤)だからか!マニアックすぎるだろ、そのリプ!!

篠原
接着剤をよく知っている人は「A液とB液を混ぜて使う感じが結婚っぽいじゃん」って仰るんですが、でも接着剤に慣れてない方のためには絶対にスーパーXがいい!

きだて
誰でもシンプルに使いやすいものを、ということですよね(篠原さんのスーパーX推し圧すごい)

 

●結婚ギフトによる接着経験値向上計画

きだて
メデタインは「結婚ギフト用接着剤」というかなり特殊ジャンルな製品と思ってたんですが、なるほど、かなり実用品として考えられているんですね。

八木原
今のところ接着剤って、ホームセンターの接着剤コーナーだったり文房具店だけでしか売ってないですよね。そこを越えて新しい市場に行けるようなものを作れたらいいよね、という話も会議でしていたんです。
なので、実用的なギフトとして接着剤が扱われるような、新しいギフト文化が作れると嬉しいです。

ギフトとしての接着剤、というこれまでに無い概念。

きだて
いや、ほんとに結婚式の引き出物として定番化してもぜんぜんいいんじゃないですか、メデタイン。

篠原
接着剤メーカー的な気持ちとしては、もちろん新しい市場というのもありがたいんですが、なにより「接着剤を使う経験を提供したい」というのが大きいんです。
接着剤を持ってないと、そもそもものが壊れても「接着して修理しよう」という発想が生まれなくて、捨てたり新しいのを買っちゃったりしますよね。

きだて
わかる!接着剤を使ったこと無いっていう人、意外といるんですよ。
僕も「買ったばかりの○○が壊れちゃったんですよ」と知人から愚痴られて「そんなの、接着剤でくっつけたらいいんじゃないの」と答えたら、「あっ、接着すればいいのか」と返ってきて、逆に驚いたことがあったんですよ。

篠原
メデタインがあることで、生活の中にナチュラルに接着剤がある、というシチュエーションが作れると思うんです。
なにか壊れたときに「あっ、そういえば贈り物でもらったメデタインがあった!」ってなれば、接着する体験を人に提供できるかな、と。

きだて
接着エクスペリエンス!

篠原
はい!まさに弊社広報室では接着経験値と言ってるんですが、メデタインでいろんな人に接着経験値を高めてもらえたらな…と思っているんです。

きだて
とにかく、どんどん一般家庭に接着剤をねじ込んでいくという方向で。メデタインはそういう意味でいい突破口になったんじゃないですか。

接着経験値とはなにか!を熱く語る篠原さん。接着剤への情熱ハンパない。

八木原
そうですね。新しい市場とか新しい文化の切り口が見えたので、別の角度からのチャレンジもやりやすくなったと思います。

篠原
こういう形なら接着剤ってもらっても嬉しいんじゃない?というのに気づけたのは大きいです。
これは私個人の考えなんですけども、今後は接着剤のある生活を当たり前にしていきたいんです。そのためには「接着剤ってこういうことにも使えるんだ」という認知をもっと広めたい。

きだて
おお!接着経験値の社会的な底上げだ。

篠原
接着剤そのものをアピールするのでは無くて、接着剤でどんなことができるのか、という話ができるようになりたいですね。
接着剤が必要な人って、接着剤そのものが欲しいんじゃなくて、それを使って修理したい、とか、工作をしたい、という人なんです。なので、私たちとしてはユーザーさんの「○○を直したい」とか「○○を作りたい」に対して、「それならこの接着剤が使えますよ」というような話がしたいと思ってます。

正直に言うと、今回のインタビューでは、エイプリルフールネタがバズって製品化して面白かったですねー、ぐらいの話をライトに聞きに来たつもりだった。
それが、まさかの「接着剤メーカーの今後の有り様とは」という話に展開。個人的に面白すぎて、篠原さんのお話に大興奮してしまった。
今後はワークショップなど実際に手を動かす場所も提供できたら…と語る篠原さん。
セメダインの接着経験値向上計画、次の一手はどんなことになるのか?
接着剤溢れる社会の到来を期待しています!

篠原さん、八木原さん、ありがとうございました。

取材協力 セメダイン株式会社 面白法人カヤック