2017年4月1日、ツイッターにこのようなネタ画像が投稿された。


投稿したのは、もちろん接着剤メーカー セメダインのツイッターアカウント

『結婚お祝い用接着剤 メデタイン』ツイートは1万件を超えるリツイートをされるなど大評判になったのだが、事態はそれにとどまらない。
約3ヶ月後の7月21日には、この『メデタイン』がなんと本当にクラウドファンディングのMakuakeにて発売されたのである(しかも即日完売!)。

今回の特集企画では、今年の上半期文房具業界でもある意味最大のトピックとなった『メデタイン』がどのように生まれたか、今後はどうなるのか、などをセメダイン株式会社広報室の篠原泉さん、そしてメデタインの企画を担当された面白法人カヤック企画部の八木原泰斗さんにお話を伺いました。

きだて
話の流れとしては、まずエイプリルフールですよね。その前後のお話を聞かせてください。

八木原
セメダインさんからエイプリルフール企画をやりたいというお話をいただきまして…。
セメダインさんのTwitterアカウントはフォロワー数も多いので、サイトを作るよりもTwitterで画像一発ネタを出してバズる企画をやりましょう!というのが『メデタイン』のスタートです。

きだて
最初に見て感じたのは、接着剤と結婚というマッチングの良さですよ。確かに接着剤の「くっつく」とか「離れない」イメージが結婚にぴったりで、「いいの考えたなー」と驚きました。

八木原
カヤックってだじゃれネタが好きなんです。
で、社内のブレストでなにか韻を踏めないかと「なんとかC」「なんとかダイン」みたいなことを延々と言ってるときに、ポッと「メデタイン」というワードが出てきて。

きだて
あっ、セメダインという商品名も元はだじゃれ要素だし(大正時代、当時輸入されていたイギリス製の接着剤『メンダイン』を攻め出せ、ということから命名された説がある)、その辺りの相性は良かったのかも。
なにより『メデタイン』というパワーワードが出た時点で、もう勝ちましたよね。

八木原
メデタイン=めでたい、というワードは誰も傷つけない、ほっこりする言葉なんで、それで行こう!と。
めでたいことと言ったら結婚とか出産とか何かのお祝い事がいいなぁと。接着剤はくっつけるものだから、やっぱり結婚だ、という流れですね。

篠原
私たちとしても、案をいただいた時には「これしかないな…!」という感じでした。もう即決です。
八木原さんが仰ったとおり誰も傷つかないし、エイプリルフール全般がちょっと飽きられている傾向の中でも、みんなハッピーになれるネタならいけるんじゃないか、と。

セメダイン篠原さん(左)とカヤック八木原さん(右)

きだて
その結果、「バズる企画をやりましょう」が本当にバズった。すごい。

篠原
反響、すごかったですね。あのツイートがRTで12,000ぐらい。さらに引用RTとかリプライでも「これ欲しい」という声がびっくりするぐらいあったんです。
その時点で「これは本当に作っても喜んでもらえるんじゃないか」と思いまして…。で、すぐにカヤックさんにご相談して、実物が形になるところまでこぎつけました。

きだて
セメダインの社内的には反響どうでした?

篠原
社内でも「ネットニュースになってたねー」って感じでかなり好意的に。
役員がわざわざTwitter担当者まで「娘が教えてくれたんだけど、メデタインっていうの?いいね、これ」って言いに来てくれて。その時は上司と「これ、いけるかもな」と密かに思いました。

これ、いけるかも!と篠原さん。

きだて
それは間違いなくいけますね。

八木原
セメダインOBの方からも連絡が来たらしいですよ。

篠原
そうなんですよ。弊社の定年退職したOBがネットニュースを見て「いまセメダインこんなのやってるの?」って連絡いただきました。

きだて
僕が今まで文房具ライターとしておつきあいさせてもらった印象から言うと、セメダインって、営業さんなんかも比較的お堅いというか真面目なイメージなんです。たぶんそのOBの方も驚いたんじゃないですかね。

篠原
実際、お堅いとか古いという印象が強いので、逆に「こういう楽しいことをするのか」と若い方に思ってもらえたら、セメダインの印象も変わるかな、というのがエイプリルフールネタをやる目的の一つでした。

 

 

そして本当に発売へ

きだて
さて、じゃあ本当に発売するよ、とツイートされてから売り切れまで、ほんの数時間でしたよね。

八木原
3〜4時間でしたね。

Makuakeの完売画面。

きだて
最初に見た時はツイートがアップされた直後だったんで、まだMakuakeに残ってたんですよ。
で、油断して「あとで買えばいいか」と思ってたら、タイムライン上に「メデタイン買えなかった!」みたいなツイートが出てきて。「えっ、マジか!」と慌てたときには時すでに遅しで購入できず…。
あれ、数量はいくつあったんでしたっけ

篠原
和装・洋装で各80点ずつです。準備していたときは「早く売れたらいいね」ぐらいの話はしてたんですが、ここまでの瞬殺は想定してませんでした。

クラウドファンディングに合わせて新たに作られた「洋装」ver. おしゃれ。

八木原
クラウドファンディングって、3日で何十%ぐらいか行くと「達成率が高い」と言われているので、そのぐらい行けば良いぐらいに思ってました。
それが、13時にアップして、それ以降はリロードする度にバーがぐんぐん上がっていくんですよ。「これはすげぇ!」って。

きだて
じゃあ、その80個×2種類で160個って、数日かけて売れたらいいなーという数字だったんですか。

篠原
そのつもりだったんですが、発売します、というリリース情報が行き渡ったころにはもう売り切れてしまいました。
さらに、売り切れたというのがまたネットニュースで広がって。メデタインというものの存在が広まった頃にはもう誰も買えないことになっちゃって…
嬉しかった反面、「これだけ広まったのに、手元に届けられなかった人がこんなにいるってどうなんだ」と私と上司で頭抱えましたね。

きだて
発売しますツイートはどれだけ拡散したんでしたっけ。

篠原
たしか17,000RTぐらいまでは行きました。エイプリルフールの時は「#エイプリルフール」ってハッシュタグがついてたんですが、今回はそういうのも無しで。

きだて
うわー、RTしてくれた人の1%が実際に買いたいと思ったとしても、足りてないのかー。

篠原
予想外の拡散といったらそれまでなんですが、「情報が行き渡った瞬間にはもう買えない」っていうのは、他にやり方があったんじゃないかという反省もありますね。

和装・洋装とも追加販売、決定しました!(個人的に超ヤッホー案件)

きだて
そこで、再販します!ということになったわけですよね。今回こそは買いますよ。

八木原
今のところ再販の数量・時期とも検討中なんですが…なんとか秋頃には…。

篠原
まずは最初にご注文いただいた方にメデタインをお届けするのが先だ、ということで。これから頑張るんですけど。

きだて
ん?頑張るって?

篠原
これから発売日の9月29日(くっつく=接着の日)まで、セメダインとカヤックのスタッフで頑張って手作りするんです。ラベル貼りから箱詰めまで、心を込めて一個一個手作りします!

きだて
社内制手工業だ。

篠原
今のところはまだ量販する予定もありませんので、欲しいと言ってくださったのに買えなかった方、すいませんが再販をお待ちください!

再販の情報などは、セメダインのツイッターアカウントで告知されるとのこと。情報が出たら見逃さないよう、要チェックだ。

→次回「メデタインで”接着経験値”を上げろ作戦」へ続きます。