最初のお客様は、50代ほどの男性です。この4月から社会人になった息子さんに、手帳を贈りたいのだとか……。

申し遅れました。私は素敵な文房具をご紹介する活動をしている「文具ソムリエール」の菅未里(かん・みさと)です。この連載では、お店にいらしたお客様一人ひとりからお悩みを伺いながら、ぴったりの文房具をご提案していきます。

さて、新社会人の息子さんへのプレゼントということですが、なぜ、働きはじめて少し経ったこの時期に? ……なるほど、そういうことですか。

今回のお買い物は就職祝いではないのです。就職祝いとは別に、手帳を贈りたい。というのも、最近、息子さんがあまり社会人らしくない手帳を使っていることに気づいてしまったから。

お客さまは、現役の営業職の方です。客先でも社内会議でも手帳を使われますから「仕事相手に見られても恥ずかしくない手帳」の重要性をご存じです。ところが、ご自身でお使いの手帳は、息子さんにはちょっと渋すぎる。だから、何を贈るか悩んでいらっしゃるのです。

では、これなどいかがでしょうか。FILOFAXのフィンスバリー。FILOFAXは「ファイロファックス」と読みます。サイズは、バイブルサイズをお勧めします。定番のサイズなので、リフィルがあちこちのメーカーから出ていて、好みのフォーマットを選べます。

日本語では「システム手帳」と呼ばれるこの手帳を、英語では「Personal Organizer」と表現します。オーガナイザー、すなわち「主催者」とか「まとめ役」といった意味ですね。

つまりこれは、単なる手帳以上のアイテムです。文房具など仕事に必要なものをまとめられるんです。

まず、カード入れがあります。名刺は入りませんが、カードが入るサイズのカード入れ。英国がカード社会であるせいかと想像しますが、クレジットカードや電子マネーを入れておけます。

別に、もっと大きいポケットもありますから、予備の名刺や現金はここにどうぞ。

ペン挿しも付いていますし、留め具の直径が23mmと大きいので、メモを貯めることがきます。情報を集約できるんです。リフィルは、ノートを数種類と、スケジュール、あとインデックスも欲しいですね。

私がお勧めしたいのは、鏡です。手帳用ミラーをノートと一緒に挟んでおくと、出先などでもスケジュールのチェックをするふりをして、さりげなく身だしなみのチェックが可能です。手鏡を持ち運ぶことを恥ずかしがる男性は少なくないのですが、これなら大丈夫でしょう。

メモ、ノート、スケジュール、筆記具、各種カードに手帳、そして手鏡……。ファイロファックスは英国の軍人に人気があったそうですが、厳しい使用条件でも、事務作業に必要なものをまとめられるからでしょう。「持ち運べるオフィス」ということで、今のスマートフォンの先駆けともいえますね。

色は、いわゆるネイビーに近い「エレキトリックブルー」がいいと思います。ブラックは歳を重ねても使えますが、鮮やかなこの色なら、お仕事で目立ちすぎることもなく、プライベートでの華やかさも確保できる。若者にはぴったりですよ。

え、どうやって渡せばいいか? 就職祝いのタイミングを逃したから、いきなり渡すにはちょっと照れがある。

そうですね……。では、お仕事に必要になりそうな本と一緒にお渡ししてはいかがしょうか? 新社会人向けの、基本的な会計の本や業界誌と一緒にプレゼントするのです。

書店はすぐそばにありますから大丈夫です。お店を出たら、まずは……。