文房具好きの諸君、今年も暑い夏が来た。
夏が来たということは、つまり“文房具の夏フェス”こと、アジア圏最大の業者向け文房具商談会=ISOT(国際文具・紙製品展)が来た、ということだ。
東京ビッグサイトで3日間ぶっ通し(今年は7月4〜6日)開催、最新の文房具と紙製品が集結し、メディアも注目のアワード…日本文房具大賞グランプリ製品がこの場で発表される。
聞いてるだけでも激アツだ。これがフェスでなくて何だというのか。

ただ、残念なことに基本的に文房具関連業者しか入れないプロ向け展示会ということで、せっかくの最新文房具の情報も一般公開はされていない。
そこで森市文具概論では、今年も会場内で展示されていた最新文房具から特に注目の製品をピックアップ。5日間の短期集中連載でレポートしたい。
これから紹介する文房具を今後もし文具店の店頭で見かけたら、ぜひ手にとってもらいたい。本当にスゴいから。

まず初日は、いきなり大本命の日本文具大賞グランプリ受賞製品に加え、いくつかの注目製品をガツンと紹介しよう。

 

日本文具大賞グランプリはこれだ!(デザイン部門)

日本文具大賞は、この1年で発売された文房具であればどれでも自薦エントリー可能、というなかなか間口の広いアワードだ。
で、その全エントリーの中から『機能部門』『デザイン部門』で各5製品が優秀賞に選出。さらにそこから各1製品が栄えあるグランプリに選ばれる、という流れである。

まず、機能部門でグランプリを受賞したのがK-DESIGN WORKSの『FLEXNOTE』。
“ディスクバインド”という日本ではわりと珍しい(欧米には手帳やノートがわりとある)方式のノートである。

この方式がどういうものかざっくり説明すると、平たい臼のような形のディスクに特殊な切り欠き穴の開いた紙(レフィル)をはめて綴じるもの。
リングバインダーのようにいちいちリングを開閉する手間もなく、レフィルをそのまま手で引き抜いたり、はめなおしたりが可能、というもの。

さらに『FLEXNOTE』はディスクの数でD7・D4・D3の3サイズがあり、例えばD7の表紙にD4用とD3用のリフィルをセットする、という応用的な使い方もできるのがポイントとなっている。
自分の使い方に合わせて方眼や罫線などのタイプが選べるだけでなく、リフィルのサイズまで好みで組み替えられる自由度の高さは、かなり面白い。

現状ではルーズリーフで充分という話もあるが、リフィル交換時の軽快さなどに価値が感じられるのであれば、使ってみても良さそうだ。

 

日本文具大賞グランプリはこれだ!(機能部門)

さて、日本文具大賞のもう一つのグランプリ、機能部門はOLFAが作った、子どもでも安全に使えるカッターナイフ『キッター』(8月発売予定)だ。

見たところ、卵みたいな丸いベースにカッターナイフが刺さっているだけ、みたいな感じ。
6月にこのビジュアルと「キッズ向けのカッターナイフ」という情報だけが公開されて、うーん、いったいどういう製品なんだろう?と首をひねっていたのだが、ようやくISOTで実物を触れて、驚いた。はー、こう来たか!

まず、『キッター』は通常のカッターナイフと刃から違う。
ご覧の通り、黄色いプラスチックで全体が覆われており、その途中途中でほんのわずかだけ刃が露出している。
この状態だと、手で刃を直接握ってもほぼ切れることはなくて安全なのだ。

使うときは、まずこの刃を卵形ベース兼刃折り器に差し込んで、ポキリ。すると、刃の先端をカバーしていたプラパーツが折れて、角っこからほんのちょっとだけ刃が露出する。
実は大人がカッターで紙を切るときも、紙に触れているのは刃先のこれぐらいの部分だけ。それ以外はこうしてプラで包んでしまっても何の問題もなく切れるのである。

また、スライダーを後退させない限り刃がボディに収納されない、という従来のカッターでお馴染みのオートロック機構も『キッター』には搭載されていない。子どもが力任せに突き刺したり机に押しつけたりしても、刃がズルズルと後退するだけなのだ。
これも安全性という意味ですごく正しいし、良くできている。

評価としては「とにかく安全」「親が安心して子どもに使わせられる」というところが主に注目されているようだが、それよりも「カッターの使い方を安全に学べる」というのが大きいんじゃないだろうか。
最初に刃折り器で折らないと使えない仕様になっていたり、そもそも刃が何度か折れる前提で作られていたり。「怖くて刃が折れない」と切れ味の落ちた刃を使い続ける大人も多いなかで、きちんと刃を折って切れ味良くカッターを使う、というリテラシーを育てるアイテムをカッターナイフメーカーがきちんと作った、というのはとても良いことだと思う。

 

カッターといえばこちらもすごいぞ

忘れちゃいけないのが、OLFAのライバル、NTカッターだ。
今回は向こうに日本文具大賞グランプリで話題を持って行かれたカタチになってしまったが、どっこい、こっちは玄人ウケする新製品で勝負である。

まず、「プロであることを楽しむ」と謳ったプレミアムGシリーズボディに、パールブラック塗装を施したモデルが登場した。
このブラックボディに黒刃を搭載すると、もううっとりするほどカッコいいのだ。あー、これ切れるわー。見た目だけで充分に切れるやつだわー。

さらに、切れ味にこだわった黒刃タイプをより鋭角(断面角11°→8°!)に研ぎ上げた『超鋭角黒刃』に、大型L用、中型H用、小型S用先端30°刃がラインナップ。
すでに発売されている『超鋭角黒刃』のS刃を試したことがあるのだが、切り込んだときの刃がスッ…と入り込む感触が恐ろしいぐらいに気持ちいいのだ。
これの大型刃って、どれぐらい切れるんだろう、と思うと想像しただけでゾクゾクする。
細かい作業に使いやすい30°刃も、消しゴムはんこなどのハンドホビー業界でかなり話題になりそうだ。

 

ISOT 2018 注目文房具その2に続く