夏の恒例、ISOT(国際文具・紙製品展)レポートももう4日目。
とはいえまだまだ紹介し切れた感は無く、あれも出せてない、これもお見せせねば…という状態。
そこをなんとかまとめて、今日は「まだ今は文房具業界的にはマイナーだけど見逃せないニューカマー・メーカー」の最新注目文房具を紹介しよう。
ほんと、紹介したいものばかりで困るー!
2万円の超高級筆ペン
まずお見せしたいのは、長野県諏訪市で金属・プラスチックの機械加工を請け負う丸安精機製作所の『Laurett’s MLK 万年毛筆』。なんとお値段2万円の筆ペンである。
今年の日本文具大賞でデザイン部門優秀賞を受賞しているだけあって、いきなりルックスがすごい。少なくともこの時点で筆ペンには見えない。そし2万円。
国内外の高級車やカメラ・オーディオの部品を手がけているメーカーだけあって、アルミの丸棒から削り出した軸がまぁカッコいいのだ。
軸全体に細かくローレット加工が施されているのに、手で握った際の肌当たりがトゲトゲしくないのは、かなり繊細な加工をしているということだろう。
ちなみに中の筆ペンユニットは開明墨汁製で、筆先には高級イタチ毛を使用、とのこと。
全体的な重量バランスは万年筆っぽく、ややリアヘビー気味。ただし見た目ほどは重くないので、書いていても重さに振り回される感じはない。
あと、やっぱりローレット加工のシャープだけどなめらかな手触りは気持ちいい。
正直なところ、筆ペンに2万円払えるかと問われれば「うーん…無理かなー」だ。しかし、このペン軸の加工技術は2万円の価値があります、と言うなら「あ、分かります」と答えるだろう。
町工場のテクニカル文房具
もうひとつ、日本文具大賞で機能部門優秀賞を獲った工場発の製品が、モールドテックの『Factionery 003 CLIP』。
見た目はバネとゼムクリップが一体化した、的なもの。このバネっぽい部分で『Factionery 003 CLIP』同士を複数連結させることで、クリップ部に挟んだ紙が自由にペラペラとめくれるようになる、というものだ。
バネ同士が噛み合うことで、回転はするけどそれによって結合が外れることはなく、でも引っ張れば簡単に抜ける。精度が高くないとそもそも成立しない、やたらテクニカルな作り方をしているのだ。
そもそもFactioneryというのは、神奈川県内の町工場3社とデザイン会社が手を組んで作ったステーショナリーのプロダクトブランドとのことで、この003 CLIP以外にもいろいろと変なアイテムを作っている。
『Factionery 002 CARD STAND』は、楕円形のバネの隙間にカードを挟んで立たせるスタンド。このバネが少し傾斜して巻かれているので、挟む位置を変えてやることでカードを立たせる角度が自由に決められるようになっている。
この楕円+斜め巻きというのがやたらに難しいらしく、製作を担当した五光発條の社長さんが「これ作るのめちゃくちゃ難しいんですよ。普通にやったら絶対作れないので、職人がひとつひとつ手作業で微調整してて…」とブースでずっとぼやいていたのが印象的だった。
老舗手帳メーカーのデジタルノート
新寿堂という印刷会社、寡聞にして知らなかったんだけど、実は能率手帳の『NOLTY』シリーズを印刷製本しているメイン工場なのだそうだ。
なのでニューカマー・メーカーと言うのもこちらが恥ずかしい話なんだけど、とりあえずISOTは初参加ということなので、ここで紹介しておきたい。
で、新寿堂で大きく展示されていたのが『WHITELINES』というノート。スウェーデン発のデジタルノートと新寿堂がコラボして、日本で製造・販売するとのことだ。
このノートは薄いグレーの紙面に白で罫線(方眼もあり)が入っており、白地に黒罫線よりも書き込みやすく、目の疲れも軽減してくれる。
さらに、これをコピーしたりスマホの専用アプリで撮影すると、白罫線がきれいに消えて、書き込んだ内容だけが残るようになる。手描きのイラストを手軽にスキャンする、という用途にも良さそうだ。
ノートをスキャンする場合、罫線だけ消すのをデジタル側で処理するのはかなり面倒なのだが、それをノート側の白い罫線で解決する、というアイデアはプリミティブで面白い。
アプリもわりときちんとできていて、紙面の隅に白で印刷されたマークを読み取って台形補正してくれるし、スキャンした画像を簡単にEvernoteやDropboxに飛ばすこともできる。この手の製品としては後発だけに、欲しい機能はちゃんと入ってる感じ。
ただ、すでにデジタルノートはブームが完全に一段落したように思うし、いまこのタイミングで新製品を出して大丈夫か?という気もしなくはない。