市内に約100社もの刃物メーカーがひしめく、日本有数の刃物の町 岐阜県関市。
ここで毎年10月に開催されている『刃物まつり』は、県内外から25万人近い来場者が訪れて屋台で刃物を買いまくるという日本最大の刃物フェスだ。
弊社も文房具屋としてハサミやカッターなどの刃物にはひとかたならぬお世話になっている。立場上、やはり一度は刃物フェスを見ておくべきではないか?
…という建前のもと、個人的に大好きなハサミを買いまくるべくフェスに身を投じた。
前編では日本刀アイスを食べて日本刀鍛錬を見て…と完全に観光モードだったが、ここからは切り替えていく。ハサミ買うぞ。
ハニーカステラと日本刀
市内のメインストリートである本町通りには全長1㎞に渡って屋台がずらりと揃い、お客さんも大半はここに集まってくる。つまり刃物まつりの中心部なのだ。
ここには、市内約100社の刃物メーカーのうち、およそ半分の41社が屋台を出店し、自社商品を売っている。
ただ、その屋台の並びがちょっと見たことない感じなのだ。
何が違和感って、縁日でお馴染みの食べもの屋台と刃物メーカーの屋台がしれっと混在しているのだ。
串焼き、たこ焼き、からあげ、ハサミ、包丁…みたいな並び。なんだそれ。
僕も日本のあちこちでいろんなお祭りを見てきたが、ハニーカステラの甘い匂いに包まれつつ日本刀が売られているのを見るのは初めての体験だ。
しかも、そこでおじさんが日本刀の値段交渉とかしてるのだ。
おじさん、いまこの状態に何の疑問も無いのか。たぶんそれ買って家持って帰ったら、ちょっとカステラの残り香がすると思うぞ。いいのか、甘い日本刀って。
刃物の大どんどん市
ただ、屋台をずっと巡っていくうちに、食べものと刃物の取り合わせは気にならなくなってきた。
ヤバいのはむしろ、屋台に並んでる刃物の値段だと気がついたのだ。
この刃物屋台で売られているものが、とにかくまぁ異常に安い。
包丁なんかも、普通にハンズの調理器具フロアで1万円ぐらいの値段がついてたやつが3,000円とか、ザラ。
なにせメーカーが近所の工場からよっこらせと運んできた直販価格なのに加えてお祭りムードの大放出割引。3割引ぐらいはぜんぜん高額な部類で、半額〜9割引なんてのも当たり前なのだ。
実際、刃物まつりに来るお客さんの目的も基本的にこの激安刃物で、「近所の人からも頼まれてるのよー」というおばさんが、包丁だの爪切りだのを10点ぐらいまとめ買いしてるのを見た。で、1万円出して何枚かお札のおつりもらってた。
これだけ激安で、しかも品質は間違いない関の刃物クオリティ。
実際、100円投げ売りでハサミ売ってる屋台の人が「100均のハサミとは切れ味が違うよー」と声がけしてた。当たり前だ。それ定価知ってるけど、600円のハサミだもん。
もう、刃物に対する価値観が完全におかしくなってくる。
ただ、屋台だけに売り方が雑。包丁の隣に爪切りと眉毛カッターがあったり、輸送用のプラコンテナにパッケージ無しのハサミやひげ剃り、缶切りがごちゃっと投げ込まれて「100円」の札だけが乗せられていたり。
買う側にも、自分が欲しいものを見つけ出すサーチ能力と刃物リテラシーが必要とされているのである。
刃物の殿堂・刃物会館も激安フィーバー
『刃物まつり』で刃物を買うなら、もうひとつ行っておきたいところがある。
それが、常設で関の刃物を販売している刃物会館だ。
ここは、1階の直売所でいつも刃物を市価の1〜2割引で販売しているところ。つまり農協の産直販売センターみたいなものだ。米とか野菜の代わりにハサミや包丁を売っていると思ってくれれば良い。
で、刃物まつりの時に限って、さらにその割引価格から1割引!というお得価格設定になっているのである。
しかも屋台と違って、ハサミならハサミ、包丁なら包丁と各メーカーのものが取り揃えてあるので、欲しいものが探しやすい。
屋台での激安品探しに疲れたら、ここで一息ついて買い物をするのもオススメだ(結局、刃物を買うことには違いがないが)。
…とまぁこんな感じで、朝から夕方までがっつり刃物三昧で楽しむことができた関 刃物まつり。
他にも、りんごの皮むきチャレンジや甲冑試着体験、カミソリでお馴染みフェザーの本社隣にあるフェザーミュージアムなどアトラクション満載なのだが、こちらは残念ながら見に行くことができず(買い物に夢中で時間オーバー)。
来年はいい包丁も買いたいし、もうちょい軍資金と時間の余裕を持って参加したいと思う。