2018年の9月29日・30日の2日間、浅草の都立産業貿易センター台東館7Fにて、都内初のペンショー、『東京インターナショナルペンショー2018』が開催された。
ペンショーとは、ざっくり言うと筆記具(主に万年筆)マニアやメーカーが集まるお祭りである。
海外だと欧米のあちこちで開催されているし、アジア圏でも台湾の台南ペンショーあたりはかなりアツいと噂が聞こえてくる。
で、日本でもこれまで札幌や神戸で開催されていたのだが、なぜか東京ではまだ「あれ?東京でペンショーってやってなかったっけ?」という感じで、未だ行われていなかったのである。
で、今年いよいよ東京でペンショーが開かれるということで、早速取材にお邪魔してみた。
(※今回の記事は弊社の社内用報告書を書き直して掲載しているので、いつもよりほんの少し雰囲気堅めでお送りします)
で、結局どんな感じだったのか東京ペンショー(イベント所感)
何度も言うようだが、初の東京開催ということで、最初から文房具ユーザーの期待値はかなり高かったようだ。
なんと初日の29日(土)は会場の7階から1階まで階段に入場待機列が並び、入場者数は1000人を越えたとの報告もあったぐらい。
各ブースでも買い物客が入り乱れて、どえらい混み方をしていたらしい。
ただ、二日目は台風24号接近の報もあり、また初日に商品を売り切り閉店していたブースもあったことなどから、かなり人の入りは落ち着いていた。
ということで、初日と二日目とで大幅に雰囲気は変わっていたと思うが、ともかく全体的に「販売側とユーザーとの距離感が近いイベントだな」という印象だった。
高価な万年筆が並んでいたこともあって、筆記具の試筆などもあちこちで頻繁に行われており、ブースでは販売側(個人/企業メーカー・販売店)とユーザーがあれこれと会話をした後に購入、みたいな流れが多くあったようだ。
近年の人気文房具ユーザーイベントとしては「紙博」や「文具女子博」が挙げられるが、あちらがユーザーの「とにかく購入したい」という物欲が主体であったのに対して、ペンショーは販売側とユーザーの交流の要素が強く感じられた。
これはまぁ、どっちがいいイベントかという話ではなくて、催しの方向性の話なんだけれども。
何があったのか東京ペンショー(イベントの特徴)
1. 人気店舗の出展
まずポイントなのは、東京ペンショー実行委員会の主催メンバーである「ブングボックス」をはじめ、「キングダムノート」「ペンハウス」「カキモリ」など、文房具好きなら名前だけでも聞いたことあるだろ的な有名販売店の出展。
都内で文房具ファンに人気の高い店舗の商品をまとめて見られる機会というのはあまり無いので、これらの店舗ブースを集中して回るお客さんもいたようだ。
2. 都内以外(海外含む)店舗・メーカーの出展
「ナガサワ文具店」(神戸)、「石丸文行堂」(長崎)、「カカイ堂」(茨城)、「文具館コバヤシ」(静岡)など、地方の有名店舗も多数出展。こちらも来場者が集中していた。
なんせ都内からだと普段は通販以外に購入手段のないレアな店舗オリジナル商品なども現物を展示・販売されていたため、ブースによってはかなり長い購入待機列もできるほど。
また、地方以上にレアな海外のメーカー/ディラーとして「Chriselle」「YaChingStyle」「Manu Propria Pens」も出展し、お客さんと親密にコミュニケーションをとっていた。
3. 筆記具に親和性の高い紙製品メーカーの出展
「紙博」みたいな、数年前ならニッチすぎてお客さん来ないよ的イベントでも多数のお客さんが詰めかける昨今の紙ブームなわけで。
当然、書くという行為からは切り離せない紙関係のブース…「カミテリア」「山本紙業」「渡邉製本」も大人気となっていた。
特に万年筆での書き味に特化したメモ用紙やノート類は、試筆サンプルがあっという間に埋まるほど。
ペンショーでさっき買ったばかり万年筆にインクを入れて、試し書きをしていくお客さんもいたらしい。
4. イベント
会場内では、筆記具に関するトークショーやワークショップも随時開催されていた。
中でも万年筆画家サトウヒロシ氏の万年筆イラストワークショップや、インクブレンダー石丸治氏のインクに関するトークショーはかなりの人気を博していたようだ。
ここは注目!東京ペンショー(注目ブース)
1. ナガサワ文具センター
関西文具シーンを牽引する文具店として神戸から出展のナガサワ文具センターは、店舗オリジナル…というジャンルを超えて全国の万年筆ファンが注目しているオリジナルインク『KobeINK物語』をドンと全色揃えて展示販売。
さらにはナガサワオリジナルの万年筆もペンショー先行発売として並べられていた。
2. 石丸文行堂
カクテルをイメージしたオリジナルインク「インクバー」は試筆待ちが出るほど。
インクバー全色が入るコレクションボックスとのセット(約9万円)も売れていた。
3. 雅流(YaChing)Style
こちらは台湾のガラスペンメーカー。
インクコンバーターをセットして万年筆のように書けるオリジナルの YaChingStyleペンは、現在国内では大阪のデルタでしか取り扱いがないため、ペンショーで試筆して購入するユーザーが多かったようだ。
4. Chriselle
世界ペン職人大会で最優秀賞受賞経験のあるカナダ人ペンクリエイター Chriselle氏の手によるオリジナル製品を販売。
エボナイト軸に時計の部品やコーヒー豆を埋め込んだものや、繊細な螺鈿など興味深い物が多数あった。
5. tetzbo
ロートアイアンファクトリーの鉄ボーによる鉄製万年筆/ボールペンの販売。
現代アートのような重量感ある鉄軸に、金ペンに近い柔らかさまでカスタムした鉄ペンを組み合わせた万年筆は書き味も独特だった。
6. 山本紙業
関西の紙製品メーカーとして最近人気が高まりつつある山本紙業では、万年筆での書き味で人気の高い紙を束で取り揃えた「もぎりメモ」を販売。
ユーザーが手触りや試筆で気に入った紙を選んで箱いっぱいまで買えるシステムで、ブースは常に賑わっていた。
7. ブングボックス
ペンショー主催のブングボックスは、セーラーのコンバーターに蒔絵を施したオリジナルや、東京メトロ公認のメトロカラーインクを販売。
また、ペンショー限定の「ファーストペンギンインク」は初日・二日目とも開場から数分で売り切れていた。
早くも来年(2019)の開催も決まったという東京ペンショー。
普段はあまり手にすることのできない珍品をゲットする機会でもあり、次回以降もかなりアツい催しになるのではないかと期待している。