日本で最もハサミメーカーが密集している場所をご存じだろうか。
それが、800年近く刃物を作り続けてきた刃物の産地、岐阜県関市である。
古くは鎌倉時代、日本刀の刀鍛冶が良質の炭や水を求めて関に集まってきたことから発展した関市では、いまも約100社もの刃物メーカー(うち、ハサミメーカーは24社)が存在する。まさに、ザ・刃物の町だ。
そんな関市では、毎年10月上旬の土日に開催されるお祭りがある(2017年は10月7日・8日)。
もちろん、刃物をメインテーマに据えた『刃物まつり』である。
いつも文房具工作だなんだでハサミのお世話になっている身として、一度は関市に表敬訪問すべきだと考えていたのだ。そんなお祭りがあるならぜひ行ってみたい。
…と思って行ってみたのだが、なんかもう想像以上に刃物愛が溢れすぎたお祭りで、すごかったのだ。
刃物まつりに行ったらまずこれ!日本刀アイス
今年で記念すべき50回を迎えた刃物まつりは、市内のメインストリートである本町通りを中心にあちこちでイベントが行われている。
早速屋台を冷やかして回りたいところだが、今回はそれより先に行かねばならないところがある。
いまSNSなどで話題になっている『日本刀アイス』の販売所だ。
メインストリートから数百m離れた関鍛冶伝承館前の販売所では、午前10時のオープンから早くも日本刀アイスを求める人たちで列ができている。
それより、そもそも日本刀アイスとはなんぞや?という方のためにお見せしよう。
靖国神社に奉納する日本刀も打つ刀匠 二十六代藤原兼房が監修した、日本刀の形をしたアイスキャンデーである。
こしあん味と上之保ゆず味の2種類で、普段は県内の和菓子屋さんと関サービスエリアで販売されているそうだが、用意するたびにスカッと売り切れるという超人気商品。
今日の分はあわせて250本が用意されていたようだが、これは朝イチで行かないと食べそびれる!ということで、まずはこの行列に飛び込むことにしたのだ。
この日は10月だというのに最高気温28°という夏のような暑さ。長袖を着ていると汗が止まらない中で食べる日本刀アイス、もう最高。
日本刀としてのツヤを出しつつ溶けにくくするため、アイス刀身には葛を入れているとのことで、食感はゼリーを凍らせたようなシャリッ&もちもち。これが非常に美味い。
「うひょー、うめー」とアイスを食べつつ写真を撮っていると、なにやら販売所のテントで動きが。なんと僕が買ったあとの10人ぐらいで、売り切れになってしまったらしい。
販売開始からまだ1時間足らずの完売ということで、まったく危機一髪だった。
アイスの次は本物も
さて、日本刀アイスを食べた後は、本物の日本刀を打つところも見学できるのが刃物まつりの面白いところ。
販売所が設置されていた関鍛冶伝承館は、なんと世界で唯一、公開式の日本刀鍛錬場が設けられているのだ。
こちらは日本刀の製造工程や歴史に関する資料、カスタムナイフのコレクションなどが展示されている資料館なのだが、刃物まつりの日は無料公開。
さらに1日に3回、実際に刀鍛冶が刀を打つ公開鍛錬が催されるのである。
赤白くなるまで熱した鋼をカン…!カン…!と槌で打つと、パッと火の粉が飛び散る。
おおー。以前に刀匠のドキュメンタリーでやってるのを見たが、やはり実際にナマで見ると迫力がある。
近くで見ていた子供がお父さんに向かって「ねえ、おもち?おもち?」と言ってたが、餅つきよりもうちょっと珍しいものを見てるぞ、きみ。
また、伝承館の2階では、今年の12月に公開となる『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』と関市のコラボ企画として、『ライトセーバーと関鍛冶』展も開催(10月29日まで)。
こちらは、日本刀アイスを監修していた刀匠 二十六代藤原兼房と、先代の二十五代藤原兼房親子が製作した日本刀『来人勢刃(らいとせーばー)』が展示されているのだ。
この刀は、前作ep7からの主人公、レイのライトセーバーをモチーフにして作られた日本刀で、刀身に軽量化のために彫られる樋(ひ)という溝に青い塗料を流し込んである。この塗料が、暗い場所でじわーっと光るのだ。
この光る感じがなんとも妖刀っぽくて、厨二マインド全開の格好良さ。真剣だけに実際に振り回したら大惨事確定だが、でもこれは触ってみたい。
…と、ハサミを見に来たつもりの刃物まつり取材だが、ここまで記事中にハサミが一丁も出てきていないことに今気がついた(というか、主にアイスの話)。
刃物まつり取材後編では、その辺りを取り戻すべくハサミを見まくることにしたい。